骨盤ベルトで腰への負担も大きく軽減ブログ:01月26日


「ごま漬けに酢は入れんのかい?」
それはママの認知症を決定づけた一言だった。

お姉ちゃんや妹からは、
最近ママが少しおかしいと聞いていたが、
遠く離れた僕は、あまり気にもとめていなかった。

九十九里の名産であるごま漬けは、
小指程度の小さな背黒イワシを丸ごと、
頭と内臓をひとさし指でキュッと取って、
塩水に一夜、酢水に一夜つけ…

一段ずつ、きれいに並べ、
ゆず、はりしょうが、ごま、とうがらしの輪切と順番に振り、
一段、又一段と、気の遠くなるような作業を繰り返し…

そして
しばらく置くと、
お子さんもお年寄りも骨ごと食べれる
イワシのごま漬けの完成となる。

ママの味はどんな有名な店のものよりもおいしく、
ママ自身もそれをわかっていた。
だから僕が実家へ帰るからというと
必ず手土産にと作ってくれておいた。

いつ頃からか少し味がかわってきて…
ん?何かが違うという感じが、現実のものとなったのだ。
50年やってきた当たり前が、ママの記憶から消えた。

たばこの自動販売機に古い500円札を入れて
入らないと泣きだしそうになったり、
お札に火をつけて燃やしてしまったり、
ママの中で一体何が起きているんだろう?

お父さんが亡くなって七年、
独りで淋しかったんだね…ごめんね…

今はまだ、
ママの中に僕達はいるんだろうか?
僕達の笑顔はママに届いているんだろうか?
僕達の想いは…

忘れんぼうになったママは
「ありがと」「ありがと」とそればかり…
もういいよ。

ママのシワシワになった笑顔の中に
僕達がいつまでもいられますように…

「ありがとう」は、僕達の方だよ。